2009年2月23日月曜日

第4回 請求文、依頼文の書き方

今回は読者のご要望にお応えして、請求や依頼をする際のメールの書き方について述べたいと思います。 請求や依頼文といっても最初に送るシンプルなものから、なかなか先方がこちらの言うことを聞いてくれないために苦情に近いものとは大きく書き方が違ってきます。まずはシンプルなものから説明しましょう。

1.シンプルな請求・依頼文

(1)「~してください」という意味を述べるには、通常は、ご存知のとおり、[Please+命令形]使います。

例 Please inform me what duty and what freight cost you calculated?
(貴方は、どのような関税および運送費用を計算されたのかご連絡ください)
文法的に説明すると、この文は次の二つの文から構成されます。 

  •    Please inform me~
  •   What duty and what freight cost did you calculate?

上記例文のように文中に疑問文が置かれた場合には、do, doesを伴うことはありません。また、[Please let me know who the manager is]のように、is , are などのbe動詞の倒置をおこなうこともありません。

(2)Would you~? と Could you~?


最初に米国に来たころは私はこの2つの言い方の意味の違いを考えず、単に機械的に「~していただけますか?」の意味で使っていました。しかし、会議で私が [ Could you explain the breakdown of these costs?](これら費用の詳細を教えていただけますか?)と尋ねたところ、先方の弁護士から、[ Yes, I could. But I wouldn't.] (説明はできるけど、説明する意思はありません)と返されたことがありました。


日本の辞書をひくと「~していただけますか」という依頼の意味で、Could you~と書いてあるのもありますが、米国人で厳格に言葉の意味を解釈する人々には、Could you~はあくまで、能力・権限としてできるか否かを尋ねるものであり、Would you~はやる意思があるか否かを尋ねるものです。従って、会議を開く意思があるかの点から、「会議を開いていただけますか?」と尋ねる場合には [Would you set up a meeting?] が正しい書き方になります。一方、会議を開くことができるか否か先方の都合や権限を問う場合は、[Could you set up a meeting?] となるのはご明察のとおりです。


2.やや高度な請求文・依頼文

実際のビジネスでは予定通りに物事が進むことの方が少ないのは、日本も米国も同じだと思います。こんな状況下で、自分の思うように物事を進めるには、どのようなメールを書いたらよいのか、ここで説明したいと思います。経験上、このポイントは次のとおりです。

  • 事実に基づき、交渉相手に問題点を的確に指摘する。この際、批判めいたことは書かない。
  • 過去の経緯、会議内容やメール等を引用し、自分の主張を明確に伝える。
  • 先方の考えや状況に対しても一定の理解を示す姿勢を見せる。
  • 本メールが握りつぶされないよう、交渉相手の上司や関係者に対しても、CC:でメールを送る(cc:, bcc: の使用法については本講座第1回をご覧ください)。

それでは、実際の文章を作ってみましょう。

<背景>
当方はABC Inc.(製造会社)の販売代理店である。有力な潜在顧客(XYZ Co.)に対して売り込みをかけているが価格が折り合わず成約に至らない。当方は、何度もABC Inc.に価格引下げを依頼しているものの、十分に切迫度が伝わっていないせいか、ABC Inc.の反応が鈍い。これを解決するため、当方はABC Inc. の担当者Tomにメールを書く。

Dear Tom,

I apologize for the fact that we have not been able to convince ABC Inc. of the critical nature for the business at XYZ Co..

(XYZとの取引に関しての重大な状況を、当方がABC Inc.によく理解させることができなかったという事実に対してお詫びいたします。)

[ABC Incを非難せず自分の責任と書いていますが、実際上はABCが事態をよく把握していないということを述べています。ややずるい書き方ですよね。]

We now know the following facts.

  • ABC's current price is the worst compared to all other suppliers.
  • XYZ had hoped to change all parts to ABC.
  • With our current price, ABC is not considered for this business.

(以下の事実を当方は知っています。

  • ABCの現在の価格は他のサプライヤーに比べて最悪であること。
  • XYZは全ての部品をABCに替えようと期待していた。
  • 現在の価格では、ABCは今回のビジネス相手とは考えられていない。)

[今までの経緯の中で当方の主張を裏付ける有利な事実などを的確に書きます。ここでは書きませんが、具体的なデータや、先方の発言があればその日時などを書けばより説得力が増します。]

From our prospective, the pathway is now very clear. This business with XYZ can be won if we can find some way to get close to $20.

We appreciate all of your hard work and wait for your instructions.

Sincerely,

Yuki

(当方の見方では、進む道は非常に明確です。$20に近づける何らかの方策を見つけられればXYZとのビジネスは獲得できます。貴方の努力に感謝するとともにご指示をお待ちします。)

[最後に明確に当方の意図を述べるます。また、感謝の意を伝えながら、判断を待つ旨を書くことを忘れてはなりません。]

ちなみに本メールはcc:として担当者Tomの上司や関係者にも送る方がよいでしょう。 


以上で今回は終わりですが、このような主張が強い書き方は通常の日本のビジネスでは難しいような気もしますが、みなさんはどうお考えになりますか。

2009年1月12日月曜日

第3回 米国ビジネスe-mailを書くに際してのエトセトラ(その2)

前回はemailを書き始めるに際しての基本的な点を書きましたが、その他ポイントをいくつか追加して説明しましょう。

1.大文字のみの文章にしない

英語では特に強調したい場合、その部分を大文字(capitals)のみで書きます。正式な法律契約書等で見られる表現方法ですが、e-mailでこの方法を用いると米国人にはあたかも怒っているように感じられるようです。


IF YOU WRITE IN CAPITALS, IT SEEMS AS IF YOU WERE ANGRY.
(大文字で書くと、あたかもあなたが怒っているように見えます。


この機会に、文法的観点から少しこの例文の説明をしましょう。

「大文字で書く」は、[write in a capital]です。ここでは複数の大文字書いているので、[capitals]と複数形になります。因みに小文字は [small letters]です。

[AS IF YOU WERE ANGRY]は過去形となっていますが、これは仮定法過去の語法で、「あたかも怒っているように」と訳します。このように、現在の事実と違う事を言う時は、過去形を使います。

それでは過去の事実と違うことを言う場合はどうなるでしょうか。この場合は、さらに時制を過去にずらし、過去完了[ had +過去分詞]の語法を使います。[ AS YOU HAD BEEN ANGRY] と書くと「あたかも怒っていたかのように」の意味になります。

2.性差別的な表現を避ける

米国でも性別を問わず一般的に人を指す表現として、次の文のように男性名詞[He/His]が使われていました。例えば次のような文です。
Your child should always be comforted when he cries.
(子供が泣く時は いつもあやすべきだ)
この場合は、男の子と女の子、双方を示す [Child]を、男をさす[his]だけで受けている事が性差別にあたります。

現在ではこのような文を書くと常識が疑われかねません。これを避けるために次の3方法があります。
  • He or She と両性の代名詞を書く                                    Ask Bob whether he or she can inform me of the price.
    (彼あるいは彼女が値段を私に知らせることができるかどうかBobに聞いてください)

  • 集合名詞 Theyを使う。
    Ask Bob whether they can inform me of the price.
    (彼らが値段を私に知らせることができるかどうかBobに聞いてください)

  • 名詞を自分で考え出す。
    例えば、he or sheが営業担当である場合は、sales person(営業担当者)という名詞に言い換えると、性別を気にかけなくてすみます。
    Ask Bob whether the sales person can inform me of the price.
    (営業担当者が値段を私に知らせることができるかどうかBobに聞いてください)

3.結びの言葉(Closing Remarks)箇条書き

いろいろな結びがありますが、どんな場面でも使える文章としては次のようなものがあります。

  • Please contact us if you have any questions.
    (質問がありましたら私たちにご連絡ください)
  • 相手からの返答を期待する場合はこのように書きます。
    I am looking forward to hearing from you.
    (ご連絡お待ちしております)
    look forward to~はご存知のように熟語ですが、最後の[to]は不定詞ではなく,前置詞であることから必ず動詞+ingを伴います。

最後に挨拶と名前・役職記入です。

 挨拶は次のとおりです。いずれも[敬具]といった意味合いです。

  • かしこまった言い方では・・・
    Yours sincerely,
  • ビジネスの相手など一般的な言い方では・・・
    Best regards,

名前と役職は次のような順番で書きます。

Shigeyuki Kubo (親しい相手では、愛称で書きます。私の場合は Yuki です)
Vice President  (副社長です。部長はManagerといった感覚です)
Sensor Business (担当部署を書きます。)
ABC Inc.      (会社名です。)
250 East Main Street (住所です。番地を先に書きます)
Stratford, CT 06519  (市町村名、州名、郵便番号(Zip Code)の順に書きます)
Tel             (電話番号)
Fax             (ファクシミリ番号)

次回は、ある読者の方のご要望にお応えして、お客様への請求文の書き方をご説明したいと思います。